day/dreamer

敬愛する古明地洋哉さんをはじめ、音楽や芸術について書き綴っていきたいと思っています

俺たちの旅〜2013新春〜名古屋 1.13sut(1)

 感慨深い夜になりました。


 名古屋で有名な手羽先のお店「世界の山ちゃん 金山南店」で、しこたま手羽先を食べ、ようやく見つけた駐車場からちょっと迷いつつ、『夜空に星のあるように』に着いたときには、開演時間を数分過ぎてしまっていました。
さいわい、まだライブは始まっていなかったのですが、ドア横の壁には「一部、立ち見になります」という衝撃の張り紙が…!


 超満員の会場の熱気…。ざわめきと、赤いネオンライトに浮かぶ多くの人の動きに、入った途端から酔いそうになっていました。テーブルから、カウンターから、壁際から、通路から、みんなの期待が、煙草の煙とともに立ちのぼり、ハコいっぱいに充満しています。
人の間を窮屈に通り抜けて、やっとのことで奥のスペースにたどりつき、壁にもたれたのですが、立ち見のライブというのはずっと昔のサマソニ以来で、ちょっと落ち着かず、やたらとキョロキョロするわたくし。女性率が高いな〜。男性も、何人かいるけど、どう見ても少数派。

 
 ライブは、まさかのセッションからスタート。『GO WEST』をなんとも愉快に演奏される御四人。本編はCOILの岡本定信さんが口火を切り、高畠俊太郎さんがいつものように楽しげに演目を披露し、我らが古明地洋哉は3番手。


 一曲目『about a boy』の、あの絶妙のギターリフ。リズミカルな旋律のモノレールに乗って、どこかへ導かれ移動していくかのような、心地よい錯覚に浸り、自然と体を小刻みに揺らしながら聴いている自分がいました。前から思っていたのですが、この曲は、スタンディングにマッチするのかもしれません。これまでのライブでも、立ち上がりたくなる衝動によく駆られていました。


 それにしても思い出されるのは、1月5日(土)のワンマンライブ#4です。僕は本来、あの日に奏でられた7曲の珠玉の新曲たち、古明地洋哉さんがあらたに生み出した秀逸の演目について、当然、語る必要があるのです。




 …しかし、この日のライブに向かう僕は、心構えにおいて、過誤があったのです…。


 
 昨年の九月、古明地さんがワンマンライブを発表された時には、ただそれだけでうれしく、ライブで生の声が聴けるというだけで、あんなに喜んでいたのに、仕事の都合で行けなかったワンマンライブ#3で、新曲が10曲も披露されたと知るや、僕はそれらの曲を、一曲もあまさず聴きたいという強烈な欲望に、とり憑かれたようになってしまったのでした。


 そうしてやってきた1月5日(土)、僕の期待は、新曲を聴くことに集中してしまっていました。ほぼそれだけ、と言った方が適当かもしれません。
 ファンとして、古明地さんの曲たちを体全体に浴びたい、というのではなく、ひたすらに「新曲! 聴きたい!」という切羽詰まった思いばかりが加速していました。そんな僕は、とどのつまり、参加できなかったワンマンライブ#3を取り返したいとか、リベンジしたいなどという、埒もない妄執に囚われていたのでしょう。


 『(just like a)stoned flower』『孤独の音楽』といったレアなナンバーも、「新曲を全部…、あわよくばプラスアルファの新曲も…!」などと、思いをエスカレートさせていたそのときの僕の心では、楽しむべくもありませんでした。
 「一刻も早く新曲に出会わせて下さい!」「前半戦から新曲が散りばめられていなければ、10曲以上にならないのでは…(焦)」といった邪念ばかりが頭に浮かび、前半が終わるころにはヘトヘトに疲弊している自分がいました。


 インターバルの間もモヤモヤとした思いを払拭できず、僕はベストコンディションからはほど遠い精神状態で、後半3曲目から披露して下さった新曲たちと、対面したのでした。


 そんな心のありさまでも、新曲たちのすばらしさ、美しさ、爽快さ、濃密さ、そして楽曲としての瑞々しい輝きは十二分に伝わってきました。
 

 それでも、今、僕はあのライブを振り返るにあたって、罪悪感を禁じ得ないのです。
 欲望に振り回され、楽しむことを忘れてしまったファンとして…。