day/dreamer

敬愛する古明地洋哉さんをはじめ、音楽や芸術について書き綴っていきたいと思っています

古明地洋哉ワンマンライブ#5―day one(2)


 今回、初めて「高速バス」を利用しました。以前に書き込みで教えていただいたのを覚えていたので、家計のこともあり、一度挑戦してみたのです。


 行きは4500円、帰りは5500円ほどで僕の住む町から東京まで、往復できることがわかりました。しかも、帰りは深夜バスという、寝ながら移動できる夢の乗り物。宿代もかからない。これまでは、新幹線→宿→新幹線という流れで、総額35000円はかかっていた旅行が、今回は総額15000円。半額以下です。すごい。


 行きは、とても気分よくバスの二階で振動に揺られていました。前から三番目の真ん中の席で、足を思い切り伸ばして寝ることができましたし、車酔いするたちだった僕が、生まれて初めてバスの中で読書も達成しました。あまり進まなかったけど、それでも大きな手ごたえを感じました。


 しかし、帰りはまさかの二階一番前席。足が伸ばせない!! 前のスペース…あまりに狭く、体から近い荷物置きに仕方なく足を乗せるのですが、それでも当然、足は伸ばしきれないし、圧迫感すらあるし、そもそも寝るのに、こんなに不自然で苦しい態勢はない!!

 
 小腹がすいていたので代々木駅前のコンビニでかつ丼を買ったのも、大きな間違いでした。バスに乗ると、みんなもう、寝てるんですね既に。そこに立ち上るかつ丼の臭い。なんで自分からアウェーにもってくかな?


 しかも、寝る前にカツ丼なんか食ったら、胃がもたれて寝られンだろ! 何考えてたんだ、あんときの俺は。「体力いるからな〜」とか、「ちょっとまた、読書してやろう」とかも、思ってたのかな。バスに消灯があるなんてね…。隣にすでに寝ていた女性は、相当旅慣れているらしく、アイマスクやら首に装着する枕やらフル装備で、堂に入ったものです。しかも、何かが気に入らなかったのか、原因はよもや僕なのか、(ストーカー的な雰囲気だろうか…知らず知らず、目で楽しもうとしていたのだろうか…いやいや…)、一回目の休憩で荷物をまとめて、(おそらく)一階席に姿を消していきました。席替えしたのでしょう。


 僕もできることなら席替え、したかった。とにかく二列目以降の、真ん中の席に。「足を伸ばしたい!」このあまりにも切実な、修羅界の炎のような欲求。思い浮かぶのはそればかり。二六時中、寝ても覚めても寝苦しく、不自然な体勢から、ありえない寝返りを打ち、素足で床を踏み、一度も熟睡することなく、最後は夢の中でバス酔いまでしていました。
 朝の冷たいターミナル駅にボロボロの態で降り立った僕を形容する言葉といえば、疲労困憊。茫然自失。バス二日酔い、閉所恐怖症。そして自業自得の胃もたれ吐き気。膝の鈍痛、変な寒気、頬げっそり、去られたショック、悪夢にうなされきった男…。このくらいにしておこう…。


 かつ丼の容器が入ったコンビニ袋を捨てるために、うろうろゴミ箱を探す僕は、一度見た、自慰射精後の我が家の犬のようでした…。


「俺は、これだけの困苦を乗り越えて古明地洋哉のライブに参加しているんだ…」という出所不明の自負が、おかしな妄想のように湧きあがってきましたが、それほどに、疲れのリアルさは圧倒的でした。怖れ戦いてしまうほどの疲れ、というと大げさかもしれませんが、今の僕は「古明地ライブ」というワードを連想するだけで、ちょっとしたPTSD症状を呈するほどになっています。「ライブ」と「あの疲れ」が必ずしもセットになっているわけではないにも関わらず、むしろそれはもう反射的なトラウマのようになってしまって…。


 関係ない話なのですが、今回のライブで「リクエストはない?」って古明地さんが観客席に語り掛けられて、「alula」と言って下さった男性の方。僕は今回、あの方にこそ、拍手喝采を送りたかった。「ごめん無理!」と言う古明地さんの反応が速すぎて、どうすることもできなかったですが…。(いや、この言い方は欺瞞がありますね。僕はあんなオフィシャルな場で発言する勇気は、持ち合わせていないようです…残念ながら…)。
 しかし、リクエストを募っておいて、即答というよりは、もはや被せ気味に「ごめん無理!」って…アーティストとしては天才でも…アサーティブ対応っていう言葉を教えてさしあげたいくらい。


 冗談です。