day/dreamer

敬愛する古明地洋哉さんをはじめ、音楽や芸術について書き綴っていきたいと思っています

世界の果て


 爽やかで美しいギターカッティングの音色から始まる『世界の果て』は、『空砲』という古明地洋哉・大勝負の一曲のすぐ隣で、色あざやかに咲いている。


 眩しいくらいに、彩り豊かなナンバーだ。この曲には主人公と恋人がいて、二人はなんと列車に乗って旅をはじめる。つまり、古明地洋哉の『世界の果て』という曲は、物語形式になっている訳です。素敵だ。


 僕がこの曲をはじめて耳にしたのは、古明地さんが『空砲/世界の果て』で世の中に銃声を響かせた後、リリース上の沈黙に入って3年後のことだった…。
 僕にはもともと、シングルを買うという習慣がなかった。その上、ロスジェネ世代の僕は、金のない学生時代を経て、フリーター、続いて4ヶ月の失業期間ののちに、ようやく職に就いた。大好きな古明地さんのアルバムは、そんな中でも必ず買っていたが、シングルを買う心の余裕はなかった。(『素晴らしい嘘』はリアルタイムで買いましたが)。古明地さんがもしも、アルバムをコンスタントにリリースされていたら、僕はまだ『空砲/世界の果て』を手にとっていなかったかもしれない。それを思うと、僕はファンとして、古明地洋哉という一人のアーティストに対する申し訳なさを感じる。


 『空砲』で、古明地さんはご自分を世の中に提示するような気持ちだったのではないだろうか。審判を仰ぐような、あるいは上申書を提出するような、そんな気持ちだったのではないかと、僕は勝手に想像している。


 それにしても、『空砲』の切実さとは裏腹に、『世界の果て』は、なんて純粋に美しく鳴り響いているんだろう。僕はどちらの曲も好きだけれど、『世界の果て』に溢れている、光のシャワーが飛び散っているような透明できらめく感覚には、自然と嬉しい気持ちにさせられてしまう。


空砲/世界の果て

空砲/世界の果て