day/dreamer

敬愛する古明地洋哉さんをはじめ、音楽や芸術について書き綴っていきたいと思っています

太陽のまばたき

 熱心な古明地洋哉のファンなら、このSSWの曲に、電子音というものがどれほど魅力的に駆使されているかということを、ご存知のはずだと思う。コンピュータを用いて創造された電子音や、エフェクトされた加工音が、美しく独創的に鳴り響くのを聴いてイマジネーションを膨らませるのも、僕が古明地洋哉の作品を聴く楽しみの一つだ。


 ミニアルバム『mind geme』の二曲目に収録された『夜の蝶』という曲には、電子的な音がまるで何かを示唆するかのように随所に挿入されている。
 もっとも印象的なのは、サビが終わった後に突然現れる、機械で鉄を切断加工するような電子音だ。とても人工的な音であるのに、一種の温かみがあるし、啓示的ですらある。そして、その音が現れるのは、たった一回。そのときだけだ。
 高温の熱と光によって、閉ざしていた心に切れ目が入れられる、その一瞬を僕はイメージする。


 アルバム『孤独の音楽』の5曲目に配された『太陽のまばたき』は電子音を用いているという点で、円熟すら思わせる名作だ。
 高音の単音ピアノと、物憂げなストリングス、そして不思議な電子音によって現前する前奏の、奥行きある幻想的な音楽世界は圧倒的だ。


 視覚的なイマジネーションを喚起する豊かな表現がそこにある。
 

 暗闇に現れる(青い)光の幻覚。それは宇宙に揺らめく恒星やガスの灯にも思える。あるいは、深海に群れなす深海魚たちの光を連想させる。音は鳴り響いているのに、情景として立ち現れるのはどこまでも静かな無音の世界だ。


 そして終盤、その世界が乱舞し始める。嵐のように、光が渦巻き、行き交う。ボーカルまでもが加工され、その一瞬、渦の外にいる誰か、つまり傍観者としての歌い手が現れ、気が付けばまた渦の中にいる。ギターは高らかに鳴り響いているが、それは痛みを抱えながらも、溢れてくる生のエネルギーを抑えきれない、そんな響き方だ。


 古明地洋哉という表現者の、純音楽的な一面というのが、如実に現れているように思う。

孤独の音楽

孤独の音楽