想いが言葉に変わるとき
- アーティスト: 古明地洋哉,弥吉淳二
- 出版社/メーカー: 日本コロムビア
- 発売日: 2004/04/21
- メディア: CD
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古明地さんの曲の中で、唯一、カラオケに入っているのがこの『想いが言葉に変わるとき』です。
こちら(http://www.pressart.co.jp/ezweb/readers/interview.php?id=51)は、タウン情報『せんだいTJ』によるインタビュー&記事ですが、こんな記述があります。
「シングル『想いが言葉に変わるとき』がスマッシュ・ヒットを記録」。
ちょっと嬉しくなって、「スマッシュヒット」というのが一体、何万枚の売り上げを指すのか調べてみたのですが、よく分かりませんでした。むかし好きだった松井常松(BOOWYの直立ベーシスト)のシングル『あの頃僕らは』が20万枚のスマッシュヒット、と紹介されていたのを覚えていたので、スマッシュヒット=20万枚と思い込んでいたのですが、どうやらこの言葉には「大当たり」くらいの意味しかなく、1万枚のセールスでも使われているようです。
とはいえ、この『想いが言葉に変わるとき』が当たったのは確かなようで、それだけ多くの人の耳に届いていたということです。古明地洋哉は、めざましテレビでも紹介されていたのですからね…。
ところで、現在の日本で、ミュージシャンを職業にするというのは、どういう意味を持っているのでしょうか。僕はそれを考えずにはいられないのです。
100万枚を超えるセールスなんて、ほぼ耳にしません。そもそも、シングルってものを買わないですよね。もしも古明地さんのシングルが出たとしたら、それはもちろん、僕は必ず買いますよ。実際に買ってるし。けれど、それ以外のアーティストのシングルなんて、ここ数年、買った覚えがありません。えーっと、ちゃんと新譜で買ったのは…ソウルセットの『夜明け前』が最後じゃないかな…。古明地さんの作品以外では、ですけれど。たぶんもう、10年以上前だ。
なぜなら、そもそもレンタルCDだってあるし、それをパソコンで複製できるんだし、YOUTUBEだってあるのです。僕らはよほど、ある特定のアーティストにのめり込んでいない限り、シングルCDを買ったりはしないでしょう。
おそらく、アルバムだって同じ構造のはずです。
これで、ミュージシャンという職業が成り立つのでしょうか。たとえばお笑い芸人と比較してみても、ミュージシャンというのは厳しさが際立っているんじゃないでしょうか。
素敵な音楽を聴きたいという人がたくさんいるのに、その素敵な音楽を作るミュージシャンが大切にされていない、という構造が指摘できるような気がします。大きな矛盾です。古明地さんが、音楽的に共感する人たちとライブを行うという形式をとり続けていることを思うとき、僕はこのことに思いを馳せてしまいます。
そしてこれは、資本主義の問題とも、関わっているような気がするのです。金が全てで、金が目的になってしまったこの社会で、人が軽んじられているのではないでしょうか。物の価値が分からない人たちが、とりあえず安いものを探し、値段がどんどん下がっていく。このデフレ社会というのは、物の奥にいる「人」の姿が見られていないことによる、必然的な帰結ではないでしょうか。
5年の沈黙を続ける古明地さんの、いま胸に抱えていらっしゃる「想い」が、音源としての「言葉」に変わるときはいつなのか。ファンの一人として、僕はその日を待っています。